REPORTvol.6

【シリーズ・カキワゴン①】大竹市「丸健水産」でかき小町の大きさに驚愕、の巻

【シリーズ・カキワゴン①】大竹市「丸健水産」でかき小町の大きさに驚愕、の巻

生産者さんの思いやストーリーを知って、消費者の方に届けるのは僕ら飲食店の役目だと思っています。貴重な体験ができました! (飲食店経営・向井大祐)

広島に「顔の見える牡蠣」「美味しい広島県産牡蠣」が食べられる飲食店を増やし、観光客の方々に喜んでいただきたい! そんな思いが高まりすぎて、牡蠣生産者様と飲食店様を引き合わせるツアーを思い立った牡蠣食う研。その初回として、11月某日、大竹市玖波漁港にある生産者を訪問して参りました。シリーズ「カキワゴン!」day1、いよいよ開幕でございます。

(取材・文/牡蠣食う研)

まずは栄養たっぷりの
大竹の海へおでかけ

牡蠣食う研です…。「今度ホニャララな集まりがあるんだけど、牡蠣が食べたいって人がいてさ~。いいお店知らない?」と月に数回は必ず聞かれます。牡蠣食う研です…(このくだり、ヒロシ様をイメージしています)。

…ということで、ディープな広島っ子でも意外と手札がないのが、「広島県産牡蠣」が確実に食べられる街場の飲食店情報。それなら、そういうお店を増やすお手伝いをいたしましょう~というのが今回の主旨でございます。

ご用意しました、こちら「カキワゴン」!

牡蠣食う研

「牡蠣の提供に興味津々の飲食店の皆様の相乗りで、向かうは県内各地の牡蠣どころ。ああカキワゴンよどこへ行く~」

などと言っていたら到着いたしました。カキワゴンの旅、本日の目的地はこちら。大竹市玖波の生産者「丸健水産」様でございます。

「今日はよろしくお願いします」

柴田様は2代目で、2013年、30歳の時にご親戚の跡を継いで「丸健水産」社長に就任。普通の牡蠣以外に、岩牡蠣と、広島県の三倍体牡蠣かき小町の3種類を養殖しておられます。「三倍体ってなーあに?」というそこの貴方、ぜひこの記事を最後までお読みくださいませ。

まずは参加メンバーで記念撮影

市川様

「僕が今やっているのはバーで、食べ物はそんなに出していないんです。でも、牡蠣って広島らしい食べ物だし、広島のクラフトジンやウイスキーとのマリアージュも期待できそうだし…。曜日限定とか、イベント限定とかでも牡蠣を出してみたいと思って参加しました」

向井様

「うちは牡蠣専門店ではないんですが、観光としての牡蠣はすごく魅力的だと思っています。安佐南区の店なので観光客の方はそれほど来られませんが、広島の牡蠣の良さは店としても発信していきたいですし。それと、牡蠣の食感やミルキーさを出せるいい調理法はないかと最近考えていて…。今日何かのヒントが得られれば嬉しいです」

柴田社長

「ではさっそく海で、まずはうちの筏を見てみてください」

船で牡蠣筏へGO!GO!

こちらの牡蠣筏は、昨年8月に仕込んで1年4カ月経ったもの。殻を大きく育てるための漁場は、宮島の西側にある無人島・可部島の近くにあり、まずはそこに筏を置くのだそう。

柴田社長

「可部島の海は、小瀬川の上流から流れてくるミネラルが集まってくるんで栄養満点なんですよ。昔から『海を見るより山を見ろ』っていうくらいで、やっぱり豊かな山から流れてくる水は、海を豊かにしてくれるんですよね。それと、潮が早いことも牡蠣殻を大きく育てるのに向いています」

殻を大きく育てた後は、殻の内側にしっかり身を入れるため、収穫直前までこちらの鳴川漁場で育てます。さらに、「丸健水産」様が独自に取り入れておられる養殖のための道具があるとのことで…。

それがこちら、イオンチューブ

牡蠣食う研

「何ですかこれは? 筏の針金の端っこに、見たことないパーツが装着されていますね。牡蠣筏用のおしゃれアクセサリー…なわけはないか」

柴田社長

「イオンチューブです。うちでは、牡蠣筏の針金一本一本に、このチューブを通しています。パウダー状にした天然鉱石なんかを溶け込ませた樹脂で作られていて、水の中に入れておくと牡蠣の生育が良くなるんですよ」

イオンチューブは、「イオンワイヤー」の商品名で販売されているこちらの商品を、より使いやすくアレンジしたもの。「丸健水産」様では、この器具を導入してから、牡蠣の生育状況が良くなり、食べた時に感じる内臓のえぐみなども軽減されたそうでございます。

試しに何個か剥いていただく

市川様

「綺麗な牡蠣ですね! スコットランドのほうでも牡蠣を良く食べるんですが、あっちの『ボウモア』とか、日本だと『余市』とか、スモーキーなウイスキーと相性が良さそうです」

牡蠣食う研

「ウイスキー!こりゃたまりませんな…」

向井様

「シンプルな味付けで生で食べてもよさそうですし、表面がぷりっとする程度にちょっとだけ茹でて食べても美味しそうですね」

さて、ここまで見てきたのが、広島で昔から行われている一般的な牡蠣養殖のようすでございます。一方、「丸健水産」様でもう一つ力を入れて育てておられるのがかき小町。かき小町は広島県立水産海洋技術センターが開発した三倍体牡蠣。普通の牡蠣を品種改良して産卵しないようにした品種のことで、産卵をしないため一年中食べることができ、実入りよく大きく育つのが特長なのでございます。

向井様

「今回のカキワゴン、僕が丸健水産さんの日に参加することにしたのは理由があって。実は前々から、かき小町が気になっていたんです。これまで自分では扱ったことがないんですが、一年中提供できる牡蠣というのは、飲食店にとっても魅力ですから」

か…かき小町って
こんなに大きいのか

陸に戻った一行は、加工場での牡蠣打ちを交代で体験。その前に柴田社長が見せてくれたのが、青い籠に入った殻付き牡蠣。さきほど海で見た牡蠣と比べると、驚くほど大きい!こちらが、向井さんお目当てのかき小町でございます。

写真でこの迫力、伝わるでしょうか

牡蠣食う研

「大きい!大きい!驚くほど大きい!さっき海で見たやつでも大きいと思ったのに…!」

柴田社長

「今1年半くらい育てた状態です。実は、これくらいだと全然育ってないんです。今年はまだ水温が高いので…。一度しっかり水温が下がると、また大きくなると思います」

かき小町の養殖は、先ほど見たような筏で吊るすのではなく、牡蠣の稚貝を籠やネットなどに入れて育て、成長に合わせて籠の大きさを変えて参ります。「丸健水産」様の場合、かき小町は漁場を動かさず、最初から最後まで先ほどの鳴川の海で育てるとのこと。

柴田社長

「育て方は生産者によって違うから、他のところは分からないですが、うちではそうしています。籠養殖は1週間に1回くらい、目に詰まったゴミを取るなどのメンテナンスが必要で、筏養殖と比べると手間がかかります。その分、価格も高くはなりますね」

 

さっそく焼いてもらうと…

いただきます!

………うまっ!!!!

向井様

「うん、うん!しっかりと強い、牡蠣らしい牡蠣ですね。焼いたことで旨味が凄く出ていて、口の中にミルキー感が残ります!」

市川様

「濃いですね~、海のミルクってまさにこのことですね。あと貝柱の存在感がすごい。食べ応えあるなあ!」

向井様

「加熱すると味が凝縮して良いですね。殻がしっかりと大きいから、間に野菜を盛ったりして使うのもいいなあ!」

 

牡蠣食う研

「くおおおおお、美味しそう~美味しそう~美味しそう~美味しそう~美味しそう~」

 

柴田社長

「よかったら牡蠣食う研さんもどうぞ!カメラマンさんも。たくさん焼いたので」

 

柴田社長の厚意に甘え、焼き立ての牡蠣を試食させていただきました。とにかく驚くのが焼いた時の身縮みの少なさ、食べた時の味の強さ。広島県産牡蠣の特長である黒々としたヒダも美しく、焼けるときの香りもかぐわしく、五感で存分に牡蠣を堪能することができました。いっぽう、我々が牡蠣に夢中になっている間、市川様&向井さまは交代で牡蠣打ちにチャレンジされたようで…。

牡蠣食う研

「いかがでした?上手にできました??」

 

市川様

「いやいや、難しいですよ!こっちは牡蠣小屋で牡蠣開けたことがあるくらいですから。力のかけ具合と、貝柱の位置を見定めて切り取るのが技術いるなと思いました」

市川様の激闘のご様子はこちら

飲食店は生産者の
物語の語り部的な存在

朝9時からちょうどお昼まで、ゆっくりと生産現場や加工場を見学させていただき、本日の「カキワゴン!」は無事終了。最後に、今回参加してくださった飲食店のお二人に、改めて感想を伺いました。

向井様

「生産者さんと直接繋がりが持てたってことが、まず嬉しいです。知らない人のところに自ら扉をたたいて飛び込むのは度胸がいるので…」

 

市川様

「いきなり問い合わせるとどうしてもビジネスライクになってしまいますしね。今日こうやって知り合えたので、今後は牡蠣に関することでいろいろ相談もしたいです。うちのバーでもイベント的に、生牡蠣とお酒のセットとか出せるといいなあ。『桜尾』とか、広島のクラフト酒と合わせる実験も興味があります。実は今後、クラフトビールと食べ物が中心の新店を作りたいなとも考えているんです」

向井様

「普通の牡蠣とかき小町は育て方も違うし、味も大きさも全然違ってました! かき小町のほうが味が濃くてミルキーですね。この持ち味を引き出すために、最小限の加熱でぷりっとさせたいなあ。生産者さんの思いやストーリーを知って、消費者の方に届けるのは僕ら飲食店の役目だと思っています。今日は本当に貴重な体験ができました」

「丸健水産」様では、これまでも仕入れを検討する方から希望があれば、加工場見学に協力してこられました。今後も受け付けるそうですので、この記事をご覧になって興味を持たれた飲食店の方がもしおられれば、以下の連絡先までお問合せしてみてはいかがでしょうか。

丸健水産

☎0827-57-4689
住所/広島県大竹市玖波3丁目9 MAP
営業/8:00~16:00
定休/日曜

 


飲食店の皆様は、消費者であるお店のお客様に、生産者が育てた食材の魅力や物語を届ける語り部のような存在。向井様のご感想から、私、そんな思いを受け取ました。生産者の皆様それぞれに育て方の違いがあり、育てる海の違いがあり、収穫される牡蠣の味もまたそれぞれ。シリーズ「カキワゴン!」では、この後もさらに2組の生産者さんを、飲食店の皆様とともに訪ねて参ります。

撮影:中野一行

※本記事では出演者の健康確認をした上で、撮影のため一時的にマスクを外しています。

今回の牡蠣食う研究

美味しく食べる。それだけじゃ嫌ッ…!牡蠣の魅力を五感で感じる新商品を作りたい

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担当研究メンバー

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