牡蠣食う研でございます。長い巣ごもりの季節を越えて春到来。我々も重い牡蠣殻を脱いで、むき身で街へ繰り出す季節がやって参りました。そんなわけで本日は、広島市中区立町のスープ専門店『and soup(アンドスープ)』様の前で、2名の研究員と待ち合わせでございます。
「牡蠣食う研さん、ここですよーーー!」
「おはようございます!向かって左から牡蠣食う研のオイスタージュース開発担当・楠原雄治研究員!そして牡蠣食う研の広報担当・市川梅研究員っっ。牡蠣食う研研究員の証のペア牡蠣シャツがどちらもよくお似合いでございますよ~」
ワンピース×牡蠣シャツの着こなしがなんともキュートなこちらの女子は、牡蠣食う研の広報担当であり、広島のタウン情報WEBマガジン「ペコマガ」編集長でもある、市川梅研究員。本日は我々、彼女の呼び出しで集合したわけなのですが、その用件というのが…。
「じゃじゃん!実は私!楠原研究員のオイスタージュースをこちらのお店『and soup』さんに、スープ開発のために提供させていただいたんです。そのスープがついに完成したということなので、今日はみんなで試食したいと思って!」
「ありがとうございます。オイスタージュースの晴れ舞台、私もとても楽しみにしています。今日はお腹をすかせるためにここまで自転車で来ました」
ここで改めてご説明を。
オイスタージュースとは、楠原研究員が営む「楠原壜缶詰工業」秘蔵の商品。牡蠣をおよそ2日間煮詰めて濃縮させた液体牡蠣エキスでございます。「楠原壜缶詰工業」は戦後牡蠣缶詰の生産で事業を発展させたという経緯があり、オイスタージュースは会社の宝の一つ。楠原研究員の夢は、現在主にオイスターソースの原料として販売しているこのオイスタージュースをさまざまな用途に展開し、いずれは調味料として市販することなのでございます。(詳しくはこちらの記事をご覧ください)
「さあさあ、さっそく入りましょう!カランカラーン」
「いらっしゃいませ、牡蠣食う研の皆さん!」
「『and soup』様、本日はどうぞよろしくお願いいたします…!」
「こちらの『and soup』さんは、2021年2月にオープンしたばかりのスープ専門店です。朝は7時30分から営業していて、モーニングはポタージュ2種類、ランチやディナーではスープ5種類を用意。広島市安佐南区の超人気ベーカリー『Cadona』さんのフォカッチャや、安芸高田市産のもち麦を混ぜて炊いたご飯と一緒に味わえます。日替わりのグラスワインやビールなど、アルコールも用意されているんですよ~」
島根県邑南町にある自社農園の野菜をたっぷりと使いつつ、広島らしい食材も盛り込みたいという思いから、牡蠣を主役にしたスープを検討していたという『and soup』様。牡蠣の身だけでなく、旨味が濃縮された原料を探し求めていた時に、市川研究員の推薦でオイスタージュースに出会ったそうなのでございます。
「飲食店でグランドメニューの食材にオイスタージュースを加えていただくのは初めてなのでとても嬉しいです。今日は最前線でご使用いただく方の貴重なご意見を頂戴したいと思っております!」
「楠原研究員、案ずるより食すが易し…さっそく試食させていただきましょう」
というわけでドーーーーーーーン
「いただきまーーーーーす♪」
「……………………………う!ま!」
「うん、美味しい!牡蠣です!スープから牡蠣がめちゃくちゃ『来る』…!」
「これはすごいですね。入っている牡蠣のジューシーな食感はしっかりと残っているのに、スープからは濃縮された牡蠣の味わいを感じます。スープを最初に口に入れると第一インパクトで旨味がガツン!と届く。そのあと具材の牡蠣を食べると、今度はフレッシュな牡蠣のインパクトが待っている…」
スープの中身は春雨、きくらげ、卵、生姜、小松菜、そして江田島産のぷりぷり牡蠣。ベースは中華風の鶏ガラスープ。彩りのクコの実も美しく、ふわりと漂う牡蠣の香りが実に食欲をそそる一杯なのでございます。
牡蠣はやっぱり
広島を代表する食材
ここからは、調理を担当する料理長の大谷庸平様、そして『and soup』オーナーの佐藤聡様に、今回のスープの味の秘密と、オイスタージュースを調理に取り入れての感想を伺ってまいります。
「まずは素晴らしい一杯をありがとうございました。伺いたいのですが、なぜ牡蠣が主役のスープを作ってみようと思われたのでしょうか…?」
「実は僕、広島出身じゃないんです。広島で生活してみると、意外と広島の人って外で牡蠣を食べないんだなと感じていて。でも、僕自身は牡蠣を食べたいんですよね。県外出身者からすると、牡蠣はやっぱり広島を代表する食材なので」
「広島の人にとって牡蠣って、身近なようで身近じゃない食材なのかもと思うところもあって。僕は関東出身なんですが、年末年始になると120個とか150個とか剥いて家族で食べるんですけど…」
「いやいや、広島の人は牡蠣を食べていますよ。『家計調査通信第551号(2020年1月15日発行)』によると、牡蠣の1世帯当たり年間支出金額の都道府県庁所在市および政令指定都市別ランキング(2016年~2018年平均)では広島市が第一位、全国平均の約2.9倍ですから!」
「うーんでも確かに、飲食店さんのメニューで広島の牡蠣がウリ!みたいなお店がめちゃめちゃたくさんあるかと言われると、そうじゃないかも?どのお店でもやっているけど、あんまり気付かれにくかったりとか」
「この店は広島の中心部にあるので、ゆくゆくは県外の皆さんにも来ていただきたいですし、地元の方にも広島の食材の良さを知っていただきたい。それならやっぱり牡蠣は使いたい。メニューについて考える中で、オーナーと相談してこのスープを作りました」
「オイスタージュースを提供していただいて最初に思ったのが、やはりオイスターソースの原料になっていることもあり、中華食材や中華風のスープに合うんじゃないかということです。かつ、オイスターソースと違って余計な調味料が入っていない。牡蠣以外に入っているのが国産塩だけ、というところもいいなと思いました。これをスープに加えれば、本来の牡蠣の旨味が自然に出せるなと。レシピを思いついてから細かい調整まで大体2週間くらいかけて開発しました」
『and soup』様のスープの特長は、一つ一つの食材の提供時の食感に細かく配慮がされていること。こちらのスープも、具材として使用する牡蠣はあらかじめ低温調理で火を入れ、ジューシーさの残る最適な加熱具合で仕込んでおき、提供の直前にスープに加えられています。また、低温調理の際に出る牡蠣のドリップもスープに加えることで、牡蠣の旨味を余すところなく閉じ込めているのでございます。
「牡蠣のフレッシュさを残すためにスープの中で煮ずに作っているのに、飲むとこれだけ牡蠣の味がするのは、まさにオイスタージュースの力ですね。牡蠣そのものの食感の良さとスープにした時の味の深みを両立させるためのマスターピースが楠原研究員のオイスタージュース…!嬉しいじゃありませんか、楠原研究員!」
「本当に嬉しいです。うちのオイスタージュースは安芸高田市の工場で作っているのですが、こちらで使われているもち麦も安芸高田市産ということでご縁も感じますし」
「僕、このスープがこれで完成したとはまだ思っていなくて。どんどん美味しくしようと、牡蠣の火入れや香りの出し方など日々ブラッシュアップを重ねています。フレッシュな牡蠣の食感とスープの深い旨味や香り、二つの味わいを常に一番いい状態で提供したいんです。作りたてのスープの香りをいかにキープするかが課題ですね」
実に頼もしい大谷料理長の決意をいただいたところで、せっかくなので未来の話題へ。我々牡蠣食う研、なにより楠原研究員の夢であるオイスタージュースの幅広い展開に向けて、可能性を探って参りたいと思います。
味が決まっていない、
だからこそ幅がある
「大谷様にお伺いしたいのですが、今回スープの材料としてオイスタージュースを使ってみていただいて、料理人として感じられたことなどあれば教えていただけないでしょうか。我々、このオイスタージュースの使用シーンのさらなる広がりを研究していきたいと思っておりまして…」
「そうですね。オイスターソースと比べてやはりサラサラしているので、いろいろな使い方が考えられると思います。食材に味をしみ込ませるのにも向いていますよね。ご飯を炊くときに少し入れると牡蠣の味がするご飯が作れますし。今回のスープのように牡蠣の身と合わせて牡蠣飯にしてもいいですし、にんにくで旨味を強化させてガーリックライスにしてもいいですよね。パクチーなんかも合うんじゃないでしょうか」
「今回初めて使うからどんなものか分からなかったんですけど、思ったより味が決まっていないんですよね。牡蠣と塩だけで、塩分もそんなに高くない。だからこそ幅のある使い方ができると思いました」
「『and soup』様では山椒キーマカレー(880円)も提供されていますよね。牡蠣はスパイスに合いますし、特に広島名物汁なし担担麺に使われている花椒との相性は抜群なんです。今後、オイスタージュースを加えた牡蠣スパイスカレーとか考えていただけると夢が膨らみますね~」
と、ここで市川研究員がまさかの提案
「ピンポン♪デザートはどうですか?牡蠣味の…アイスとか!」
「ア…アイス!?市川研究員、むちゃくちゃ言いますね!」
「牡蠣味と牛乳はすごく相性がいいんですよ。このオイスタージュース、褐色でしょう?これはカラメル化しているからなんです。ですから、例えばこれをもっと煮詰めて、プリンのカラメルソースのような感じでミルク系のデザートにかけたら………………………」
果たして次回『and soup』様を訪れるときには、デザートにオイスターアイスが加わっていたりなんてするのでございましょうか。いずれにせよ本日は、調味料としてのオイスタージュースの可能性により一層の確信が持てる取材となりました。我々牡蠣食う研では、今後もオイスタージュースを使った料理の研究を進めて参ります。こちらの記事をご覧いただき興味を持ってくださった飲食店の方は、ぜひ我々牡蠣食う研の仲間になっていただき、ともに研究を進められると嬉しいです。次回研究レポートを楽しみにお待ちください。
撮影:キクイヒロシ
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and soup (アンドスープ)
店頭に除菌スプレーを設置
※本記事では出演者の健康確認をした上で、撮影のため一時的にマスクを外しています。