REPORTvol.2
試行錯誤の末にお披露目!「まるで生牡蠣」広島Ver、の巻
“ 生食そのものではないけど、一般的な加熱牡蠣とは違うレアな食感が楽しめて、しかもしっかりと加熱されている、面白い商品です! ” (編集者・山根尚子)
広島を訪れた観光客の皆様に、美味しくて安心して食べられる牡蠣を一年中提供したい! そんな思いを胸に、低温スチームと急速冷凍の技術で作る牡蠣的牡蠣商品「まるで生牡蠣」広島県産牡蠣Verの開発を進めてきた牡蠣食う研の面々。2023年秋のキックオフから、はや半年以上。その開発のもようと、ついに完成した「広島県産版まるで生牡蠣」の全容をご紹介いたします。
(取材・文/牡蠣食う研 山根尚子)
なんだか見覚えのある?
会場で再びブース出展
春4月(今はもう6月ですが…)。4回目を迎えた「ひろしま春の牡蠣まつり」の興奮も冷めやらぬなか、今季、早くもSeason5を始動している牡蠣食う研でございます。さて本日私、西区は商工センターの「広島市中小企業会館 広島市総合展示館」にお邪魔しております。何をしに来たのかと申しますと…。
牡蠣食う研さん、こちらへどうぞ~!
「…いや山根研究員! この始まり方、めちゃくちゃ既視感あるのですが!?」
本日牡蠣食う研を呼び出したのは、広島でタウン情報誌「TJ Hiroshima」や広島県営SNS「日刊わしら」の編集者をしている山根尚子研究員。2019年の牡蠣食う研の立ち上げ以来、企画や広報などを担っておられます。…というこの一文も、半年前にまったく同じことを書いた記憶が…。そう、こちらの記事でございます。
「さっすが記憶力抜群、牡蠣食う研さん。去年の秋に、業務用食品卸の『アクト中食』さんが主催する展示会『FOOD&BEVERAGE2023秋』にお呼びたてしたのもこの私。さらに今日、展示会『FOOD&BEVERAGE2024春』にお呼びたてしたのもこの私です」
「…実はね、アレがついに完成したんです!」
「アレ?ああ、2023年ユーキャン新語・流行語大賞受賞でおなじみの?阪神岡田監督ですか?」
「全然違います!アレと言ったらコレですよ、コレ!!!!!!!!!!!!」
アレと言ったらコレ、「まるで生牡蠣」。
皆さまご記憶でいらっしゃいますでしょうか。こちらの「まるで生牡蠣」は、牡蠣を特許技術のスチーム方法で加熱したのち、マイナス60度・エアブラスト方式の急速凍結で凍らせた商品。加熱によるたんぱく質の変性を最低限に抑えながら、ノロウイルスが死滅するまで熱を通せるという製法が特長なのでございます。つまり、
生ではないんだけど、生っぽさを感じるレアな食感。
しかも安心して召し上がっていただける。さらに冷凍商品だから1年中提供できる…といいう、「広島に行けば一年中牡蠣が食べられる&できれば生が食べたいと思っておられる観光客の皆様」と、「通年で牡蠣を提供したいと考えている飲食店の皆様」にうってつけの牡蠣的牡蠣商品なのでございます。
「昔から牡蠣が身近にある広島だからこそなのか、飲食店でも、特に生食の牡蠣の扱いには慎重なんです。この『まるで生牡蠣』は生食そのものではないけど、一般的な加熱牡蠣とは少し違うレアな食感が楽しめて、しかもしっかりと加熱されている、今までにない面白い商品なんですよね~」
「そうでしたそうでした。それで、これはすごくいいねということになったんだけど、残念ながら広島県産の牡蠣で作った商品がなかったんですよね!?」
「そうなんです! 既存の商品は岡山県産牡蠣。2023年にはまだこの世になかったその、『広島県産牡蠣を使ったまるで生牡蠣』が…」
「ついに完成したんですよ!!!!!!」
「今日の展示会『FOOD&BEVERAGE2024春』で、完成した広島県産まるで生牡蠣を、来場者の皆様にお披露目できることになったんです! 牡蠣食う研さんにもぜひご紹介したくって! ふんふん!(鼻息)」
「なるほど、そういうことでしたか~!」
「ついにここまで漕ぎつけたなあ…。2023年の春に『まるで生牡蠣』と出合ってから今日まで、長かった…。これまでのことが、走馬灯のように蘇ります~」
…ということでここから展示会レポートへ入る前に、山根研究員による「広島県版まるで生牡蠣開発秘話」を、少しだけご紹介させていただきます。
ほわ、ほわ、ほわわわわわ~ん…♪
測って、蒸して、冷やして
2023牡蠣物語in岡山
時は戻って2023年10月某日。山根研究員と仲間たちは、岡山県某所にて「まるで生牡蠣広島県Ver」の試作&研究を行っておりました。参加したのは、先行商品である岡山県産牡蠣を使った「まるで生牡蠣」を製造・販売している「ケレスイノベーション」の皆様と、広島でこの商品を実装するため準備を進めている「アクト中食」の皆様。さらに「まるで生牡蠣」の加工技術に興味を持って見学に訪れた飲食店関係の方々も加わり、総勢7名での試作となりました。
用意したのはこちら。当日水揚げした広島県産殻付き牡蠣
「殻はしっかりと大きいですね。今まだ10月なんで、どのくらいの身入りかが気になりますが…」
「じゃ、早速やってみましょうか!」
最初に加工前の重さを測り…
「スチーム後にたんぱく質が変性して水分が抜けると、身入りの悪い牡蠣は軽くなっちゃうんだよね。『まるで生牡蠣』の魅力は、加熱しても縮まないしっかりと筋肉質な牡蠣を使わないと半減しちゃうから。加熱前の88%の重量を維持できていることが、試作成功の条件と考えましょう」
特殊なスチーム機に入れて加熱
加熱後の重さを計量してみると…
「がーん!めっちゃ軽くなってる!なんでなんで!?」
上手く…いかなかった…!!!!!!!!!!!!!
「いくつか原因はあると思うんだけど、まず、この牡蠣が10月のものだっていうことだね。先行商品の岡山県産牡蠣で作った『まるで生牡蠣』は、牡蠣の身入りが一番いい、春先に収穫した牡蠣を使用しているので…。10月の牡蠣もそれはそれで美味しいけど、身入りしてくるのは今から海水温がぐっと下がって来てから。同じ牡蠣でも、もう少し寒くなってから試作したほうがいいね」
「なるほど…もうちょっと待ってみますか」
「あと、今回使用した牡蠣は2年物で、殻の厚みがあるんだよね。スチームの掛け方を少し調整してやらないと、効率よく熱が入らない。農林水産省が求める『中心温度85度以上の状態で2分間以上の加熱』を満たすようにスチームすると…あー、カチカチになっちゃった。せっかくなんでこれもマイナス60度で急冷はしてみるけどね」
しょぼーーーーん…(´・ω・`)
…ということで、せっかく広島から岡山まで牡蠣を持ち込んで試作したわけですが、残念ながら失敗に終わったわけでございます。広島県産牡蠣でまるで生牡蠣を製造するには、
●身入りの良い時期の牡蠣でもう一度試すこと
●殻の厚みがある2年物牡蠣に合わせたスチーム方法の調整
この2点が課題だと判明いたしました。その後も生産者や収穫時期を変えて12月、2月と試作を繰り返しておりました。そして時は流れ…。
試食&試食&試食!
まるで生牡蠣in広島
2024春!ついに完成&お披露目と相成りました
「うっうっ、ついに完成しましたよ牡蠣食う研さん! ああ~、広島県産版まるで生牡蠣が完成しなかったらどうしよう。夜も眠れない日々が続きました…。食事も喉を通らなくて、この半年牡蠣しか食べていません…」
「牡蠣は食べてるんかい!」
「今回用意したのは、展示会のために作った広島県産版まるで生牡蠣です。3月に収穫したしっかりと身が入った広島県廿日市市産の2年物牡蠣を特殊な製法でスチームし、急速冷凍しました。コストを下げるために殻付きで販売しているので、解凍後に自分で殻を開けないといけませんが、スチーム後の牡蠣だから、開けるのもそんなに難しくはないはず。…ただし、今回はスピーディに提供するための助っ人を投入しました!」
オイスターバーからの刺客(?)
「開けること自体は難しくないんですが、今は凍っているのでちょっと時間かかりますね。解凍後なら、誰でも簡単に開けられると思いますよ」
「自然解凍に適した解凍時間も研究の余地ありですね!」
今回ご用意した牡蠣は300個。岡山県産の先行商品をご試食いただいた前回の展示会が2日間で約600個の提供だったことからこの数量を導き出しました。下村様には程よく解凍された「まるで生牡蠣」をスムーズに提供できるよう、様子を見ながら少しずつ殻を開けていただきました。
「そうか、殻を開けた後の方が外気に触れるから、中身は溶けやすくなるわけですね」
「もぐもぐもぐ。なるほど旨いね。確かに、生のようで生じゃないって言うか、レアっぽい食感だね。解凍してそのまま食べられるし、これは売れそうやな~」
「ああっ、あなたは、2024年度から広島県観光連盟に出向、そのまま牡蠣食う研に配属された田島健太郎研究員!」
「説明的やなあ。それで、これ1個いくらなんだっけ?」
「1個200円、業務用の10個入りパックで、今シーズンは限定5000個の販売だそうです」
「けっこう少ないんですね」
「初回なんで、テスト販売的な感じなんですよ。今年好評だったら、来年はたくさん製造されるはず…! その最初の試金石になるのが今日の展示会での試食です。さっそく皆さんに召し上がっていただきましょう!」
開場と同時に、たくさんの来場者が!
研究員総出で説明し…
説明し…
説明し…
TV取材にも説明し…
無事、300個試食をフィニッシュ!
「いや~終わりましたね。実際のところ、反響はいかがでした?」
「去年秋の岡山県産牡蠣での試食のことを覚えていてくださる方も多くて、味が違うねという声はけっこういただきました。好みはそれぞれですが、広島県産牡蠣の方が食べなれているからか、味に親しみが持てるという方も。全体的に、皆さん喜んでいただけたと思います。アンケートに答えてくださった方のなかから、印象的なものをまとめました!」
●お好み焼き店に置いたら、特に夏場は期待できそう。
●冷凍の牡蠣に良いイメージ持ってなかったけど、考え変わったわ~
●身が大きくてぷりぷり感ありました!
●うちは宮島線の駅の近くにあるので、外国人観光客がすごく多いんですよ。出店みたいな感じで売ったらウケるような気がします。
●食べた時のジューシーさが凄いですね!
●自動販売機で売ってみたら?
…と、おおむね好評のうちにお披露目を終えた、広島県産版「まるで生牡蠣」。ただ、我々牡蠣食う研の目標は、「まるで生牡蠣」を開発することではありません。目指すのはもちろん
「広島を1年中いつ来ても美味しい牡蠣が食べられる街にすること」。
より多くのお店に、広島を訪れる観光客の皆様へ向け、オフシーズンも牡蠣を提供していただくことなのでございます。
「それを思うと、この展示会はまだまだ研究の扉に立ったところ。ここから、夏に牡蠣を提供すれば、たくさんの観光客のかたが喜んでくださるということをお伝えしていかねばですね!」
「それなんですけどね、牡蠣食う研さん。実は、今回の展示会で『まるで生牡蠣』に興味を持ってくださったある施設の方が、一緒に何かやりましょうって声を掛けて下さったんですよ!」
「え!?それっていったい…」
気になるところで次回に続く!
そんなわけで我々、2024年の夏に、夏に食べる牡蠣も美味しいということをお伝えするためのキャンペーンを予定しております。今現在、通年で牡蠣を提供しておられる飲食店様。そしてこの夏は、牡蠣を提供してみようかなと思っておられる飲食店様。もしご興味あれば、我々牡蠣食う研までご一報くださいませ。
撮影:中野一行
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今回の牡蠣食う研究
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Rのつく月だけじゃない。1年中美味しく安心して食べられる牡蠣を町に実装したい!