REPORTvol.1

加熱してるのにレア食感「まるで生牡蠣」って何?の巻

加熱してるのにレア食感「まるで生牡蠣」って何?の巻

生はあまり得意じゃないんですけど、これはすごい美味しかったです。匂いが気にならないし、味もしっかりと味わえます…! (バイヤー・平原美穂子)

広島を訪れた観光客の皆様に、美味しい牡蠣を一年中食べていただきたい! そんな思いが高まる、アフターコロナの牡蠣食う研一同。とあるきっかけで、低温スチーム・急速冷凍技術で生まれた新商品「まるで生牡蠣」と出会うことに…。いったいどんな商品なのか!? まずは多くの人に試食していただくため、2023年9月5日・6日、食品展示会「FOOD&BEVERAGE2023秋」に参加してまいりました~。

(取材・文/牡蠣食う研 山根尚子)

広島最大の食品展示会
2daysにブース出展

皆様お久しゅうございます。牡蠣食う研でございます。時は2023年9月5日。本日私、広島市南区比治山の「広島産業会館」にお邪魔しております。広島の玄関口・JR広島駅から車で10分ほどのエリアにあるこの場所に、さて何をしに来たのかと申しますと…。

牡蠣食う研さん、こちらへどうぞ~!

牡蠣食う研

「山根研究員!朝もはよからナニゴトですか!?」

本日牡蠣食う研を呼び出したのは、広島でタウン情報誌「TJHiroshima」や県営SNS「日刊わしら」の編集者をしている山根尚子研究員。牡蠣食う研の立ち上げ以来、企画や広報などを担っておられます。

山根研究員

「実は今日、ぜひ牡蠣食う研さんに…いや広島で飲食や食にまつわる仕事をしているすべての皆さんに食べていただきたい牡蠣があって、展示会『FOOD&BEVERAGE2023秋』に出展しているんです。百聞は一見に如かず。ささ、ずずいと、中へ!」

「FOOD&BEVERAGE2023秋」

山根研究員

「『FOOD&BEVERAGE』は、広島の業務用食品卸会社「アクト中食」さんが、年に2回、春と秋に行っている食をテーマとした展示会なんです」

2023年9月5日・6日の両日行われた『FOOD&BEVERAGE2023秋』には、全150メーカーが出展。おもに業務用の食品・調味料・飲料などの新商品がずらりと並ぶ、まさに広島最新食事情の見本市!といった趣でございます。さて、我らが牡蠣食う研のブースはと申しますと…。

「いらっしゃいませ~!」

牡蠣食う研

「ファンタスティックオイスター! 会場入ってすぐ、めちゃくちゃいい場所ではございませんか!? 牡蠣食う研の幟や腰幕も素敵でございますな!…ところで、上野研究員がお持ちの、その看板は何ですか? えーと…『まるで生牡蠣』…?」

「まあ、食べてみてよ!」←ミスター味っ子風に

もぐもぐもぐ。もぐもぐもぐもぐ。もーぐもぐ…

牡蠣食う研

「うーまーいーぞー!(←味皇様風に)上野研究員、ぬあんですかこれは!?」

上野研究員

「嬉しいです!やっぱりこの牡蠣、美味しいですよね!?これは、蓋だけ開けたハーフシェルの牡蠣を加工して作った、新しい冷凍牡蠣なんです。自然解凍するだけで食べられるんですよ」

「まるで生牡蠣」という商品名のようですが、見た目は完全に殻付き生牡蠣。しかし、食べてみると生ではないことはすぐに分かります。さりとて、いわゆる蒸し牡蠣や茹で牡蠣、焼牡蠣なのか、というと…これが全く違うのです。みずみずしくて、うま味がしっかりとあり、生臭くもなく…。なんとも不思議な味わいの牡蠣なのでございます。

牡蠣食う研

「私、久しぶりに心の貝柱が震えるのを感じております…!これはいったい!?」

情熱と目力が凄い
名物社長登場!

初体験の「まるで生牡蠣」の味に震えておりますと、ふいに目の前に、牡蠣食う研シャツを身にまとった体格の良い男性が現れたのでございます。

「そうでしょ~!GOODでしょ~~~!」

男性

「私はね!この『まるで生牡蠣』の開発に携わっている、ケレスイノベーション株式会社の増田一郎と言うもんです!!!牡蠣食う研さん、よろしくお願いしますよ!!!!!!(ぎゅ~と握手)」

牡蠣食う研

「ち、力強い…! あの~、これはいったいどういう商品なんですか?生ともスチームとも違う、何とも言えない独特の食感だったのですが…」

増田様

「これはね!とれたての牡蠣を、当社が独自に開発した蒸気加温装置で加温した後、上殻だけ外して検品を行い、ハーフシェルとしてマイナス60℃で超低温急速冷凍したものなんです! 加温の時も冷凍の時も組織を壊さないので、牡蠣の食感・風味・見た目をほとんど損なわず、まるで!生のように!!加工することが!!!できるんです!!!!」

牡蠣食う研

「蒸気加温装置…といいますと、つまりスチームですか? しかしこの牡蠣、一般的なスチーム牡蠣とは全く食感が異なるのですが。何というか、あんまり固まってなくて、生じゃないけど生っぽいというか…」

牡蠣には100gあたり約7gのたんぱく質が含まれております。生卵を焼くと目玉焼きになるように、たんぱく質は加熱によって変性し固まります。一般的な加熱用牡蠣は、農林水産省の指導により「牡蠣の中心温度が85度以上の状態で2分間以上の加熱」をすることでノロウイルスを殺菌しますが、中心が85度以上になるまで加熱すると、外側の温度は90度を超え、たんぱく質がしっかりと凝固してしまうのです。ところがこの「まるで生牡蠣」、加熱した牡蠣ならではの「固まった感じ」があまりないのです。

増田様

「それが特許なんですよ!! 当社の蒸気加温装置では、独自のスチーム方法で温度や蒸気の調整を行い、牡蠣が完全にノロフリーになるまで加熱殺菌しても、身の縮みがないように加工できるのです! そして加熱殺菌済の牡蠣を超低温急速冷凍。この冷凍時にも組織を壊さずに凍らせるので、解凍しても品質が落ちることはありません。ですから、自然解凍するだけで、生に近いジューシーな食感を残した牡蠣を安心して食べていただけるのです!まるで獲れたて!まるで出来たて!!まるでそのまま!!!まるで生牡蠣!!!!!

牡蠣食う研

「な、なるほど…と言いますか増田様、すごい熱量ですね!」

増田様

「キャッチフレーズは旬感(じかん)よとまれ®!うちの家族が矢沢永吉のファンなんだよね!」

とか言ってるうちに、会場には続々と来場者が

山根研究員

「試食した方の感想を伺いたいですね。突撃取材してみましょう!」

「すみませ~ん、まるで生牡蠣、いかがでした?」

「良品計画」平原様

「いや、びっくりしました!実は私、あんまり生が得意じゃないんですよ。でもこれ、凄い美味しかった! 匂いも気にならないし…。食感も、生より少し火が通った感じがあるけど、カチっとしてなくて柔らかくて。生牡蠣は取り扱いのハードルが高いけど、これなら検討できるかも~」

山根研究員

「う、嬉しい。サクラのようなコメントでありながらサクラにあらず! そうなんですよ。生牡蠣じゃないけど、加熱牡蠣でもない。少し火が入ったことで旨味が増しつつ、生食に求めるジューシーさが残ってるんですよね」

こ、この牡蠣には…可能性がある…!

広島を世界一美味しく牡蠣が食べられる街にするべく日々活動している我々牡蠣食う研ですが、牡蠣のシーズンは秋から始まり、春で終わってしまいます。冷凍できちんと美味しく、かつ驚きのある牡蠣が夏も提供できるとなれば、広島を訪れる観光客の皆さまも喜んでくださりそうです。

増田様

「一番美味しい時期の牡蠣を収穫して『まるで生牡蠣』に加工しておけば、身も縮まず、鮮度良く、殺菌済で安心して食べられる牡蠣を飲食店さんにもお届けできるんですよ!僕はね、これはサスティナブル牡蠣だと思っとるんです!!!」

山根研究員

「飲食店さんが生鮮の牡蠣を扱う際のネックになる、ウイルス対策や日持ちの悪さが解消できる画期的な商品ですね。分かりました。この展示会の二日間で、広島中の飲食関係者の皆さんに『まるで生牡蠣』を食べていただきましょう!頑張るぞ~!」

牡蠣600個試食で
未来の仲間探し

こうして、「まるで生牡蠣」を飲食店の皆様にお披露目する2日間の展示会がキック・オフ。山根研究員はじめ牡蠣食う研メンバー8名とケレスイノベーション増田さんで、来場者の皆様へ試食のお声掛けを致しました。

用意した「まるで生牡蠣」は計600個

試食の後は説明し…

説明し…

説明し…

2日目の夕方に見事、完売!

これまで牡蠣食う研に関わってくださった飲食店様はもちろん、初めてお会いする飲食店の方々、スーパーなど量販店のバイヤーの方々、約600名の皆様に「まるで生牡蠣」を召し上がっていただき、アンケートとヒアリングで感想をいただきました。

山根研究員

「いやー牡蠣食う研さん、二日間かけ抜けましたね! 私、立ち続けすぎてもう、足が棒を超えました…。さて、試食してくださった皆さんから聞いた主な感想をまとめましたよ!」

●生牡蠣!…とまでは思わんけど、普通のスチーム牡蠣より貝柱がずっと柔らかいねえ!
●生じゃないけど加熱でもない、なんかこれ、いい!面白いし美味しいし、旨味が凄い!
●これは瑞々しさがスチームとは段違いですね。サラダとかにしたら良さそう!
●美味しすぎる…これ絶対売れるじゃろ!!!!
●生牡蠣っぽい味なのに、火が通ってて安心だなんてビックリ!
●生では得られない旨味が出ていて、かつ生っぽい風味は残っていて、とても面白いと思います。

牡蠣食う研

「山根研究員!アナタこれ仕込んでませんか!?絶賛されすぎでしょ!」

山根研究員

「仕込んでませんよ! いやー皆さん満足してくださって本当に嬉しいです」

牡蠣食う研

「よ~し、じゃあ早速、この『まるで生牡蠣』を広島の飲食店さんに実装していただくわけですね?」

山根研究員

「それがそうはイカの塩辛…。簡単にはいかないんです。っていうのもね。実はこの牡蠣、岡山県産なんですよ」

牡蠣食う研

「え!? そうなの!?」

広島県産牡蠣の『まるで生牡蠣』は、まだこの世にない

創業70年の「世良水産」様、ここ15年ほどは、牡蠣を使ったお土産物開発にも注力しておられます。加工品に使用するのは3~5月頃の、しっかりと身が入った春牡蠣でございます。

増田様

「今回皆さんに食べていただいた『まるで生牡蠣』は、産卵を経ていない1年ものの牡蠣であることや、養殖方法の工夫で生まれた筋肉質な身であることなど、牡蠣そのものにも特徴があります。これから広島県産牡蠣バージョンの『まるで生牡蠣』を作るなら、牡蠣が変わったら加工法はどうなるのか、試作や確認を繰り返さないといけません。こればっかりは、実際にやってみないとわかりません!」

山根研究員

「私ね、今シーズンの牡蠣の収穫が始まったら、試作をしたり、レシピを考えたりする会を開いて、広島県産牡蠣バージョンの『まるで生牡蠣』が生まれるまでを応援したいと思ってるんですよ!今日展示会で出会った皆さんから、一緒に考えてくれる仲間が生まれるといいな~」

増田様

「それはいいですね!ぜひ、一緒にやりましょう!!今度はうちの家族も広島に連れてきますわ!!!私以上の『まるで生牡蠣』好きですから!!!!」

…というわけで。

広島を観光で訪れる皆様に、一年中美味しい牡蠣を召し上がっていただくため、「まるで生牡蠣」広島県産牡蠣バージョンを作ろう! と、新たな取り組みに燃えている、我々牡蠣食う研。展示会で「まるで生牡蠣」をご試食いただいた皆様に、そっとお手紙をお渡しさせていただきました。会場で受け取ってくださった皆様はもちろん、この記事を読んで「まるで生牡蠣」に興味を持ってくださった飲食店の皆さまも! 

この取り組みの仲間になって、一緒に研究してみませんか。もし我こそは、という方がいらっしゃれば、ぜひ我々牡蠣食う研までご一報くださいね。

撮影:中野一行

今回の牡蠣食う研究

Rのつく月だけじゃない。1年中美味しく安心して食べられる牡蠣を町に実装したい!

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担当研究メンバー