REPORTvol.3
「牡蠣にあう究極のレモンサワー」をエキニシの人気店にインストールしたら、傑作レサワが完成してしまった、の巻
“ オリーブオイルが入ったレサワとカキフライ、めちゃくちゃアリですね… ” (大須賀研究員)
広島No.1バーテンダーの呼び声高い、牡蠣食う研メンバーの野間真吾研究員が開発した「牡蠣にあう究極のレモンサワー」。レシピを公開したところ、広島駅近くの歓楽街「エキニシ」などでは、野間研究員のレシピをベースに牡蠣にあうレサワを提供しているお店もあるそうです。なんて素敵なこと!しかし、一部からは「レシピどおりにやってもうまくいかない」「うちで出すお酒の方向性と違う」という困惑した声もあるとか。たしかにレシピ公開だけで、自然拡散するのは難しいのかもしれません。
そこで今回は野間研究員本人が直々にエキニシの人気店「citan(シタン)」さんを訪問。自身のレシピを直インストールしていただきます!それではご覧ください…突撃!隣の牡蠣レサワ!
(取材・文/牡蠣食う研 野間真吾、大須賀あい)
お酒は各店舗で独自の個性を出した方が絶対に面白い
「こんにちは、牡蠣食う研でございます。今回、私はJR広島駅の西側に広がる飲み屋街『エキニシ』にやってまいりました。細い路地沿いに、赤ちょうちん系の居酒屋からオシャレなバーまで多くの飲食店が軒を連ねる、なんとも魅力的なエリアであります。本日は、野間研究員がエキニシのイタリアン『シタン』さんで、牡蠣にあう究極のレモンサワーを直インストールする日。お店の前で、エキニシに詳しい大須賀あい研究員と待ち合わせをしているのですが、遅れているようですね。ちょっとドアを開けて、先に入ってみましょ……(ガタッ)あ、いた!」
なんですか、そのいい女風の登場の仕方は。
「あの、ちょっとばかり気合いが入りすぎているような気もいたしますが…」
「そんなことないですぅ。野間さんを意識してなんてことは絶対にないですぅ。って、おひとりですか? 野間さんは…野間研究員はご一緒じゃないんですね(とても残念そうに)」
「僕なら、ここにいますよ」
(いい声で)
「野間さん、お待ちしてました♡」
「お待たせいたしました。ふふふ、エキニシに久しぶりに来たのですが、数年前と随分雰囲気が変わってますね。実は少し早めに現場に到着したので、ちょっと散策してみたのですが気になるお店がたくさんありました」
「そうなんです! ここ数年で若い人が入ってきて、古い店舗跡をリフォームして新しい店を開いたりしてるんですよ。牡蠣の季節にはそれぞれのお店で牡蠣料理を提供しているので、“広島はしご牡蠣”を楽しむこともできます」
なお、エキニシは牡蠣食う研が目指す「広島を世界一おいしく牡蠣が食べられる街」にするための様々な施策に協力してくれる、私たちの研究にとってなくてはならないエリアであり、この地域のお店の皆さまは私たちにとって“心の友”でもあります。いつもありがとうございます(深々と一礼)。
ちなみに大須賀研究員はエキニシのエリア担当。エキニシを「もっと牡蠣をおいしく食べられる街」にするため奔走する一方、この街に“野間式レサワ”を広めているレサワ大使でもあるのです。
そしてこちらが野間式レサワの導入を検討している「シタン」の岡田裕介さん。
大阪出身で、長年様々なジャンルの飲食店の厨房で働き、東京の超人気店「PASTA HOUSE AWkitchen」の一号店でも修行経験があるイタリアンシェフの岡田さん。2012年に奥様の出身地である広島に移住し、2018年9月に念願のお店をここエキニシにオープンすることに。ここシタンでは、質の高いカジュアルイタリアンと美味しいワインなどが楽しめます。
「はじめまして、野間です。本日はよろしくお願いいたします。今日は私が考えたレサワをインストールするということですが、最初に申し上げたいのは、私のレシピをそのままコピーしていただきたい、ということではないんです。あのレシピは、あくまでベースとなるもの。基本です。そこから、様々なお店の方々が、自身のお店用にチューニングしてほしいと思っています」
「それを聞いて安心しました。たとえばうちはイタリアンなので、(レシピで指定されている)焼酎はないんです。エキニシの他の店でも、同じように焼酎がないから、あのレサワは出せないと思っているお店も多いようです。でも、僕はそこでつまづくのはもったいないと思っていて。野間さんのレシピを参考に、好きにやればいいじゃないですか。全部同じようなお酒を出したってつまらないですし」
「仰るとおりです。各店で個性を出した方が絶対に面白いです。こちらはイタリアンなので、やはり白ワインでつくるのがよいかと思います。たとえば『オペレーター』(※白ワインとジンジャーエールを混ぜたカクテル)のような感じのお酒をちょっとアレンジされるとか。いいかがですか?」
「同意見です。実はうちですでに出しているレサワは、白ワインをベースに炭酸水を加えたものです。いわゆる『スプリッツァー』ですね。だから『オペレーター』と発想は同じです。まずそれをお飲みになっていただけますか?」
「野間さん、飲む前にハードルを上げちゃいますけど、これとっても美味しいんですよ。クラッシュした氷と白ワイン、ソーダとレモンのシンプルなサワーなんですけど、ついつい何杯でも飲んでしまいそうになる」
「そうなんですね。楽しみです」
どれどれ……。
「……これは美味しいですね。酸がちょうどいいです。うん、絶妙だ。さすがイタリアンのシェフですね。お料理のことを考えてつくられているのがわかります」
「恐縮です(笑)。結局、レモンだけじゃなくて、白ワインの酸味が後押ししているから、混ざっているというか。これは品種勝ち…トレッビアーノが良い仕事をしてくれてますね」
焼酎をつかわない
野間式レサワをインストール
それでは改めてレサワ研究のスタートでございます。今回、岡田さんからオーダーがあったのは、カキフライにあうレサワのインストール。オリーブオイルをたっぷり入れる、野間オリジナルのレサワです。
ということで、まずは基本となるレシピを野間研究員に再現していただきました。
(※今回は割愛するので、詳しくはこちらの記事を御覧ください)
「そんなにオリーブオイルを入れるんですか……! やっぱりこうやって実際に教えてもらわないとわかないことがたくさんありましたね。実は、レシピ記事を見て僕も試してはみたんですが、全然おいしくできなかったんですよ。でも、その理由がいろいろわかりました。グラスのふちに塩をつける方法、レモンの絞り方、ソーダの注ぎ方、そしてオイルの入れる分量…こうやればよかったんですね」
「フフフ。是非、飲んでみて味もお確かめください」
「言われなくても飲みますとも!」
「これは、おいしいですね!!」
「お酒にオリーブオイルを入れて、こんなにおいしくなりますかね(感嘆)。こんなお酒つくる人がいるなんて、ちょっと衝撃的です…。カキフライのようなオイリーな料理を食べたあとに、これで流し込むという考え方もすごいです…脱帽です」
「ね! ね!野間さん、すごいでしょ! なんだか私が褒められてるような気分になっちゃいました(笑)で、今回はこれをベースに、シタン風にアレンジしていただけるんですよね?」
「はい。そのためにやってまいりましたから(いつにも増していい声で)」
というわけで、ここからがホントにホントに本番でございます。野間研究員が開発した「カキフライにあうレモンサワー」をイタリアン料理のお店用にアレンジしつつ、岡田さんに伝授していただきます。
①まずグラスのふちにレモン汁をつけます。
「グラスのふちに塩を付着させるために、レモン汁をこうして塗ります。“糊”の役割でもありますが、香り付けにもなるので水などではなくレモンを使うのがよいでしょう」
②グラスのふちの半分に、塩をつけます。
「塩は岩塩をお使いになることをオススメします。私の場合は、メキシコの岩塩と、ちょっとアクセントにヒマラヤ産のピンク岩塩と、スパイシーなブラック岩塩を混ぜています。すり鉢で擦っているので、かなり粒子は細かくしてますね。そうすることで、口どけがすごく良くなるので、グラスの中のお酒と一体化しやすく、甘味が引き立ちます」
③レモンシロップを入れます。
「レモンサワーは甘みを加えてバランスを整えることが基本となります。フレッシュなレモンジュースを使う場合は、お好みで甘みを加えてください。こちらのレモンシロップは程よい甘みが入っているので、ソーダを加えるだけで十分おいしくなると思います」
④冷えた白ワインを注ぎます。
「ここがシタンさんの最大のポイントですね。私のレシピではクセのない焼酎にレモンを漬け込んだものをベースとしておりましたが、シタン風レサワでは白ワインを使用します。なお、こちらの白ワインは、酸味の効いた味でカキフライにも相性バッチリですね。岡田さんのチョイス、すばらしいです!」
⑤よく冷えたソーダを加えます。
「これも基本的なことですが、ソーダの温度とお酒の温度を揃えなければ、混ざりにくいので気をつけてください。大体、冷蔵庫は4度くらいだと思いますので、それくらいまで冷やしたワインに同じ温度のソーダを注いであげると混ざりやすいです。揃っていないと泡立ってしまい、揮発して、炭酸も抜けるし、アルコールも混ざらないという最悪なパターンに陥ります」
⑥氷を入れて混ぜます。
「もし余裕があれば、よい氷を使うことを強くオススメいたします。お酒の味わいの7〜8割くらいは氷で決まります。質のよい氷を使えば、味が劇的に変わるんですよ」
⑦広島のレモンを乗せます。
「レモンはお好みですが、すでにレモンフレーバーが白ワインについているので、1/8カットくらいでも味わいは足りるかと思います」
⑧オリーブオイルを入れます。
「これもお好みですが、個人的にはたっぷり入れる方がよいと思います。カキフライなど油を使ったお料理を油で流す…フレンチドレッシングのようなイメージです」
⑨香り付けとして、ローズマリーを炙るのもアリ。
「ローズマリーでなくても、コリアンダー、タイムでもいいのですが、ハーブを加えるとより深みが増すかと思います。こうやって炙ると、ものすごく香りが立ちます」
⑩乗せて出来上がり。
「こちらのお店にあるもので、つくらせていただきました。なお、ソーダではなくトニックでつくってもおいしくなると思います。そこはお客様のお好みですが、個人的には、トニックの方が、このワインは相性がいいと思いますね。酸味があって苦味があって甘味があると、やっぱり三位一体でバランスがとれるかと」
「なんか…もう圧倒されました…。ちょっと飲んでいいですか?」
グビっとな。
「なんですかね、うまいうまいと思って飲んでみて、やっぱりうまいという(笑)。野間さん、あなたホントにすごい人ですね!」
「岡田さん、大げさすぎません? 岡田さんのお酒もおいしいんだし、そこまで違いはないでしょ(と、言いながらグラスを傾ける)」
うっま!!
「ローズマリーの香りがやばいくらい利いてます。こんなレモンサワー飲んだことない…。それでいてものすごく飲みやすくて、女性でも何杯でも飲んじゃいそうです。危険だわ…(遠い目)」
岡田さん、大須賀研究員が大絶賛した、「シタン流野間式カキフライにあうレサワ」。牡蠣食う研も飲ませていただきましたが、お二人の言葉に嘘、大げさ、まぎらわしいという要素はないと断言させていただきます。ただ、問題はこのお店のお料理とも本当にマッチングするのかどうかでございます。そこで、シタンさんがこのために開発したというオリジナルのカキフライをつくっていただくことにいたしました。
こちらがそのお料理。
なんだかとってもオシャレ!
「パンとカキはすごく合うんです。このパンは知り合いがやっているお店のもので、ソフトバケットのような感じで、生で食べてもおいしいですが、ちょっと焼いています。カキフライも揚げているわけじゃなくて…ちょっとつくり方は秘密ですが、オーブンを使ってます。自信作なので是非、レサワと一緒に召し上がりください」
パクっとな。
「おいし〜い!」
「これはおいしい!! カキフライもこういうアレンジをすることで、完全に新しいお料理になりますね。パン、トマト、オリーブ、バルサミコ酢…全部合わせることで、こんなになるなんて。ある意味で、カキフライの食べ方ってもっと自由でいいんだなって教えてもらった気がします」
「そんなに褒めていただいてうれしいです(照れ)。それより、今日はレサワが主役ですから…マリアージュをするかどうかお確かめください……」
するに決まってますって!
「さっき野間研究員が、油で油を流すフレンチドレッシングみたいな……って仰ってた時、私も一応頷いてましたけど、正直よくわからなかったんですよね(苦笑)。でも、食べて、飲んで納得です。オリーブオイルなんて入れたら油っこくなって、揚げ物にはあわないんじゃないかと思ったんだけれど、逆にすごくいいですね。本当にマリアージュするというか、油を油で流すという表現が、やっと実感できました。オリーブオイルが入ったレサワとカキフライ、めちゃくちゃアリですね」
「(突然カットイン)いやぁ、またすごいものが出来上がってしまったようですね。ちなみにですが、今回おつくりいただいたレサワはカキフライ用となっておりますが、シタンさんで出されている他のお料理にもマッチしますでしょうか?」
「これくらいドライにつくってあれば、何でも相性はよいかと思います。他のイタリア料理でも、十分マリアージュするのではないでしょうか」
「だったら、牡蠣のパスタでもつくろうかな。牡蠣のスープパスタ。このレサワともあいそうだし」
「あ〜、それ絶対おいしいやつじゃないですか。大好きなシタンが、どんどん人気店になってしまう……これ以上、ファンが増えたら気軽に来れなくなっちゃいます」
「いやいや、全然気軽に来てください! ウチは気軽に美味しい料理とお酒を楽しめるお店なので。でも、今日は野間さんにいろいろ教えていただいたおかげで、たくさんのことを学ぶことができました。本当にありがとうございます!」
「いえいえ、こちらこそ勉強させていただきました。お酒にたったひとつの正解はなく、そのお店にあったものを、最善を尽くしてお出しすることが大切だということを改めて実感しました。なにより、こんなにおいしいお料理を出されているお店のお力に少しでもなれたのであれば、私としてもバーテンダー冥利に尽きます」
「今回教えていただいたレサワのレシピも、またここからどんどん広がっていってほしいですね。『ウチもシタンのレサワを取り入れたよ』なんて言われたら…最高ですよ。そうやって広島の食文化が発展していく、その起源の一端になれたら、本当にこんなうれしいことはありません」
野間研究員による牡蠣にあうレサワの直インストール企画、いかがでしたでしょうか。お店に出張訪問することで、直接、有機的なやり取りができ、野間研究員もどんどんアイデアが湧いてきて、そのお店にばっちりあったオリジナルレサワが完成いたしました。おいしい牡蠣とおいしいお酒があれば、多分、それだけで最高……野間研究員は、広島の街に究極のレサワを広めつつ、そんな当たり前のことを教えてくれているような気がいたします。
撮影:阪本 剛史
このレモンサワーは、
下記店舗でお楽しみいただけます!
牡蠣ングダム「広島はしご牡蠣」へ
お越しください!
多様な牡蠣料理をつまみながら、街のいろんな名物店をまわる、広島ならではの食べ歩き「広島はしご牡蠣」へ、ぜひお越しください。
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今回の牡蠣食う研究
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牡蠣もレモンも名産で、しかも相性がいい――だったら牡蠣にあう究極のレモンサワーを作っちゃおう!