REPORTvol.1
広島が誇る天才バーテンダーに牡蠣にあうレサワをつくってもらおう、の巻
“ 牡蠣にあう究極のレモンサワー……そこのカテゴリー、まだ誰も到達していないと思うんです。難しいからこそ、そこを目指す価値は十分あると思います! ” (広島が誇る天才バーテンダー)
牡蠣を美味しくいただきたい時に、何を飲むべきか――この問いに対する答えは、さまざまあるかと存じます。ある人は「シャブリ・ワインがベスト」だと言い、別の人は「薫香の強いウィスキーこそ至高」と語ります。
しかし、牡蠣食う研は言いたいのです。広島の名産「レモン」を使ったレモンサワーこそ牡蠣のベストパートナーであると。
さまざなま牡蠣料理にあう究極のレモンサワーをつくり、広島中の飲食店に広める……崇高すぎる目標が決まりました。ならば第一歩目として、やるべきはレシピ開発でございます。そんな折、牡蠣食う研はある情報をキャッチ。「広島バーテンダー界に、この男あり」と呼ばれる若き天才がいるというのです。しかもチャレンジ精神旺盛で、広島愛に溢れた男性とのこと――彼しかいません。私たちはある種の確信にも似た感覚を胸に、夜の広島・紙屋町へと向かったのでした。
(取材・文/牡蠣食う研)
天才バーテンダーと
呼ばれる男の広島愛がすごい
「こんばんは。只今の時刻は、20時を少し回ったところ。私たち、牡蠣食う研は広島・紙屋町にあるオーセンティックバー『Top Note(トップ・ノート)』にやってまいりました。あまり来ることもない類の非常におしゃれなお店なので、ちょっと緊張しております……」
とってもステキなバーの雰囲気に圧倒される牡蠣食う研。それにしても、このバー。内装全体から細かい調度品まで作り込み具合がエグうございます。これは超絶こだわりをもった御仁のお店だということが、入店5秒でわかります。
その時です。カウンターの中にふと目をやると、かなりのドヤ顔でこちらをご覧になっている男性がいらっしゃるではありませんか。
「いらっしゃいませ」
(激シブ声で)
「はじめまして……。と、とても素敵なお店ですね。もしや、あなたが天才バーテンダーさんですか?」
「ふふふ、天才なんてとんでもありません。私は、広島でバーテンダーをやっている野間真吾と申します。先ほどご連絡をいただいた牡蠣食う研さんですか?お待ちしておりました(とにかくいい声で)」
説明しましょう。野間真吾さんは、広島生まれ、広島育ちのバーテンダー。18歳からバーやホテルで修行を積み、29歳のときに「自分の世界観を表現するには、自分の店をつくるしかない」と一念発起し、「The Bar Top Note」をオープンさせた超叩き上げ系のミスター・ガッツマンでございます。東京や大阪、もしくは海外での活躍もできるほどの実力を持ちながらも、「広島が好き」「広島のバー文化をたしかなものにしたい」との強い信念を持ち、広島の街で広島のために活動を続ける、ものすご〜く広島愛を持った御仁なのです。
現在は広島市内に3店舗のオーセンティックバーを構え、自ら毎晩カウンターに立ちつつ、国内外問わず開催されるコンペティションにも積極的に出場し、多数の賞を受賞。また、歴史あるアメリカの鑑評会「LAインターナショナル・スピリッツ・コンペティション2018」にて最高金賞を受賞した中国醸造株式会社の広島産クラフトジン「SAKURAO GIN ORIGINAL(桜尾)」の開発にも関わり、アンバサダーも務めていらっしゃいます。
さらに、お酒だけにとどまらず紅茶にも造詣が深く、オリジナルフレイバーティーの専門店も広島市内に2店舗展開。酒類、紅茶に関するさまざまな資格を持つ“資格ハンター”でもあるそうです。余談ですが、平均睡眠時間は1日3時間という生粋のショートスリーパーなのだとか。
つまり……
実力もさることながら、
努力家であり、
飲食に関する幅広い知識を持ち、
広島愛に溢れた寝ない男。
それが野間真吾さんなのであります!
わしら、牡蠣にあう
究極のレサワをつくってほしいんよ
野間さんがすごい方だということをご理解いただいた上で、早速本題に進みましょう。
「本日は野間さんに相談があってやってまいりました。我々、野間さんのお力が必要なんです。単刀直入に申しますと……牡蠣食う研に入っていただけませんか?牡蠣食う研というのはですね……(以下、活動趣旨を説明)」
「広島の牡蠣の可能性を探り、あらゆる課題と向き合い、牡蠣のさらなる魅力を引き出し、広島を“世界で一番おいしく牡蠣が食べられる街”にする活動……とても魅力的ですね」
「是非、参加させてください!」
「ありがとうございます! では、これからは正式メンバーということで、遠慮なく野間研究員と呼ばせてもらいます」
「あ、はい(やや引き気味で)」
「野間研究員に最初にお願いしたいミッションはですね、レサワの開発なんですよ」
「はい?」
「レサワです、レサワ。今、巷の居酒屋で大人気のレモンサワーのことでございます。野間研究員にワールドクラスのレサワをつくっていただけないかと」
「レサワ……ですか」
「(あれ、怒ってらっしゃる?)申し訳ございません。今のお話はちょっと忘れていただいて、今シーズンのカープの話でも……」
「やりましょう(食い気味に)」
「ほげっ?」
「それが広島のためになるのであれば、喜んでやらせていただきます」
漢である。
一瞬、返答に窮した野間研究員でしたが、それは彼の責任感の強さたるゆえ。やると決めたら、絶対によいものをつくる。どんな状況でも全力疾走は怠らない。野間研究員はそう心に決め、「広島のためにやる」と答えてくれたのであります。
「レモンと牡蠣など切っても切り離せないもの。レモンは牡蠣の口当たりを爽やかにしてくれるだけでなく、旨味成分、コクも引き立ててくれます。マリアージュしない理由はありません。そのレモンを使ったお酒で牡蠣にあわせようというのは素晴らしいアイデアだと思いますね」
「そうですよね。私たちもそう思っています」
「特に広島の牡蠣と広島のレモンの相性の良さは疑いようがないですね。なぜそう言えるのか……それは広島のレモン農家さんが基本的に、島や海沿いでつくっていることと関係しています」
「お酒の世界では、同じ土地のものでペアリングするのが基本です。瀬戸内海沿岸でたくさんの日光を浴び、海の潮に包まれて育ったレモンと、瀬戸内海で育った牡蠣があわないなんてことはありません」
「間違いございませんね。ただし、一つだけ懸念点がございます。実はレシピ開発はプロ中のプロが広島の美味しいレモンを使えば、かなりいいものができるだろうなとは思っております。ただ、それを街の飲食店に実装するときになってどうか……」
「と、申しますと?」
「今回のプロジェクトは、開発したレシピを実際の店舗にインストールし、みなさんに楽しんでいただくまでをゴールに設定しております。広島で牡蠣料理を出す実際の飲食店、居酒屋で、究極のレサワを広めていきたいわけです。逆に言うと、実装を想定したレシピ開発が必要になる……」
「なるほど、それはまた一気にハードルが上がりましたね。そもそもシンプルなカクテルは一流のプロであってもつくるのが難しいものです。たとえばジントニック。ジンとトニックを注ぐだけですが、これで味を整えるのは高い技術が必要です。レモンサワーも同じだと思いますね。焼酎、レモン、ソーダ、氷の体積、それぞれの割合でまったく味が変わります」
「プロであるからこそ、その難しさがわかるわけですね」
「ただ牡蠣自体はあらゆるお酒にあう食材ですからね。一般的には、牡蠣とあうお酒は、ワインであれば『シャブリ』だと言われています。それだけでなく、日本酒のアミノ酸とも相性がいいですし、スピリッツなどのハードリカー(アルコール度数の高い酒)とあわせると牡蠣の魅力をマイルドにしてくれて、とんでもないマリアージュを生みます。牡蠣はしっかりとコク、旨味が凝縮しているので、それに負けないように強めなお酒をあわせるのが王道なんです。そういう意味で言うと、度数低めのサワーというお酒で、牡蠣にあわせるものをつくるのは、結構難易度が高いですね」
「なにより、つくるのが難しすぎれば、それはメニューとして広がっていかないですから。味もさることながら、実装されることを考えた現実的なレシピを考えるとなると、本当に難しいテーマかと」
「そこをなんとか……なりませんか」
「ええ、そこをなんとかするのが私の役目だと思いますし、むしろやりがいを感じますね。牡蠣にあう究極のレモンサワー、おもしろいじゃないですか。そこのカテゴリー、まだ誰も到達していないと思うんです。難しいからこそ、そこを目指す価値は十分あると思います!」
「その言葉、待ってましたよ!」
「もうやってみるしかありません。私の知識と経験をもとに、生牡蠣、焼き牡蠣、牡蠣フライなど調理方法別に、究極のレモンサワーをつくってみます!」
かくして野間研究員による、牡蠣にあう究極のレモンサワー開発が進められることとなりました。彼はどんなスペシャルなレサワをつくってくれるのでしょうか?牡蠣にあうレモンサワー開発プロジェクトは、第2章に続きます――。
撮影:坂元たけふみ
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今回の牡蠣食う研究
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牡蠣もレモンも名産で、しかも相性がいい――だったら牡蠣にあう究極のレモンサワーを作っちゃおう!