REPORTvol.2
天才バーテンダーに「牡蠣にあう究極のレモンサワー」の開発をお願いしたらレサワの概念が変わった、の巻
“ 今回、開発したレモンサワーは非常によいものだと自負しています。ただ、これは唯一の《正解》ではない。あくまでひとつの方向性です。このレシピを参考に、みなさんでどんどん、可能性を広げていってほしいと思います ” (野間研究員)
牡蠣もレモンも広島の名産で、しかも両者の相性はぴったり。さらに空前のレモンサワーブームとくれば、牡蠣にあうレサワを開発し、広島県内に広めていくのは私たちの使命でございます。そこで、私たちは牡蠣食う研メンバーで広島No.1バーテンダーの呼び声が高い野間研究員に「牡蠣にあう究極のレサワ」の開発を依頼いたしました。
野間研究員に課した開発条件は大きく3つ。
- 抜群に美味しいこと
- 再現可能なレシピであること
(難しすぎない) - 牡蠣料理にあうこと
私たちが望んでいるのは、いずれの条件も満たしたレモンサワー。その後、野間研究員は開発に没頭いたしました。深夜まで続く営業(常連さんとの小粋なトークをしながら最高品質のカクテルを何杯も提供する超ハードワーク)、日本全国の一流バーテンダーが出場する大型コンペティションへの出場(つい最近も「ヘネシー カクテルコンペティション 2019」で見事グランドチャンピオン及びX.O 部門優勝!)や海外視察など多忙極まる野間研究員が、寝る間を惜しんで試作を重ね、4つのレシピを編み出しました。今回は野間研究員作の「牡蠣にあうレサワ」をご紹介いたします!
(取材・文/牡蠣食う研)
天才バーテンダーが開発した
自信作「牡蠣にあうレサワ」が完成!
時計の針は16時を少しまわったところ。こんにちは、牡蠣食う研でございます。さて、今から3時間ほど前でしょうか、私のケータイに留守電が入っておりました。激シブの声…野間研究員であります。
「出来ましたよ、牡蠣にあうレサワが…」
という倒置法の短いメッセージ。
胸が高鳴りました。たった5秒の留守電で、これほどまで心躍らされたことがあったでしょうか。はたして野間研究員はどんなレサワを完成させたのでしょうか。もう気になって気になって、はやる気持ちを抑えて野間研究員がオーナーを務めるオーセンティックバー『Top Note(トップ・ノート)』(広島・紙屋町)へと向かいました。
「ガタッ(←ドアを開ける音)。ご無沙汰しております、牡蠣食う研でございます」
「ふふふ、お待ちしておりました」
どうも、野間です。
「留守電、お聞きしました。ついに、ついに…牡蠣にあうレサワのレシピが完成したんですね」
「コクリ(無言で頷く)」
「それは汎用性の高い、再現可能なレシピになっているわけですよね?」
「コクリ(やはり無言で頷く)」
言葉少なに…というより言葉を発さずに極太フォントの「YES」を伝える野間研究員。相当の自信作なのでしょう。早速、どのようなレサワが完成したのか教えていただきたいと思います。
【手始めに】
どんな牡蠣料理にも使える、
レサワのつくり方
「今回はさまざまな牡蠣料理にあうレモンサワーをご紹介したいと思うのですが、まずは“オールディー”というタイプの、いつ飲んでも美味しくて、どんな牡蠣料理にもあうレモンサワーをつくります。その名もずばり、『広島トマトレモンサワー』です」
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Lemon Sour Recipe
どんな牡蠣料理にもあう「広島トマトレモンサワー」
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《ご用意いただくもの》
- ざく切りにしたレモンとトマトを凍らせたもの
- 焼酎甲類(可能であれば40%まで引き上げた焼酎を作る)
- ソーダorトニックウォーター
「レサワなのにいきなりトマト、ですか。この時点ですでに驚きです」
「ええ、トマトと牡蠣の相性は最高ですからね。トマトの酸味が牡蠣へと、牡蠣の旨味がトマトへと、互いの美味しさを増幅させる効果があります。また見た目にも楽しい作り方なので、居酒屋メニューとしてもウケるのではないかと思います。まずざく切りにしたレモンとトマトの果実を凍らせて、それを氷代わりにしてください」
「レモンとトマトの果実を氷代わりに…すごい発想ですね」
1.レモン、トマトの順に、凍らせた果実をグラスに入れていきます。
2.焼酎を入れて、ソーダ(orトニックウォーター)を注ぎます。
3.完成!
「すごく簡単ですね。そして先ほど仰ったように、見た目もキャッチーで“映え”を求める方々にもウケがよさそうです」
「飲み干してもレモンとトマトは残るので、焼酎とソーダ(orトニックウォーター)を足せば、2杯〜3杯くらいは美味しくいただけるかと思います。お好みによって、氷を少し入れてみてもいいかもしれませんね。そこは臨機応変に」
「レモンとトマトの味がある限りは、数杯飲めちゃうと。これはうれしいですね」
「ちなみに、本日紹介するすべてのレモンサワーに言えることですが、さっぱりさせたい場合はソーダで、少し甘めに仕上げたい方はトニックウォーターで割るのがよいかと思います。またさっぱり感と甘み、どちらも欲しい場合は、ゆずジャムやゆずレモンシロップなど、柑橘系の甘みを入れてソーダで仕上げるのがいいでしょう。その場合は、最初に、ゆずジャムと焼酎をグラスの中でしっかり混ぜた後に、凍らせたレモンとトマト→ソーダでアップする順番で行ってください」
生牡蠣にあうレサワのつくり方
「それではここから、それぞれの食べ方にあわせたレシピとなります。まずは生牡蠣にあう『トマトレモンサワー』をご披露いたしましょう。こちらがご用意いただくものとなります」
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Lemon Sour Recipe
生牡蠣にあう「トマトレモンサワー」
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《ご用意いただくもの》
- インフュージョン焼酎 45ml
- 無塩トマトジュース 30ml
- 1/4カットレモン 約10ml(※トマトジュースの酸味によって増減)
- ソーダorトニックウォーター
- パセリ(※お好みで)
- タバスコ(※お好みで)
「またトマト(笑)。ちなみにレシピの一番最初に書いてある『インフュージョン焼酎』とはなんでしょうか?」
「インフュージョンとは果実やハーブなどを漬けたお酒のこと。今回は広島産のレモンを漬けたインフュージョン焼酎を使用したいと思います。広島産のレモンは皮からつけても安心していただくことができるのが特徴ですね。なお、使用する焼酎は甲類で限りなくクセのないもの。クセのないお酒に広島産のレモンを漬け込むことで、レモンのフレーバーが乗りやすくなります。もちろん好みはあるでしょうから、それぞれのお店なりのお酒を使用することが望ましいかと思います。ただ、クリアなお酒を使えば、レモンの香りをトップに持ってくることができるのでオススメではあります」
「焼酎は中国醸造の『ダルマ焼酎 レトロラベル』を使用いたしました。わさびの里の名水を利用した、まろやか重視タイプの甲類焼酎ですね。サトウキビ由来の焼酎で、本当にクセがなくてクリアなのでオススメです。それではつくっていきますね!」
1.焼酎を入れたグラスにトマトジュースを注ぎます。
「トップバッターがトマトジュースとは!もうこの時点でレモンサワーの概念が覆ります…」
「今回使用するトマトジュースはトルコ産のトマトをつかったもの。これは普通にトマトジュースとして美味しいものなんですね。やはりいいトマトジュースを使うと、出来上がるお酒も全然違います。実はこれ、赤肉のトマトしか使っていません。普通のトマトジュースは、青肉と混合しているので青臭さが立ってしまうのですが、これは100%赤肉なのでトマトの旨味がストレートに来ます。そして生牡蠣との相性も抜群です」
2.塊の氷をイン。
「氷のカットの仕方からして違いますね…」
「これもどこまでこだわりを持つかですが、どのような氷を使うかでお酒の味はかなり変わってきます。氷の良し悪しでお酒の味は7割〜8割は決められると言っても過言ではないかと思います」
3.氷を丁寧にかき混ぜます。
4.ソーダ(orトニックウォーター)を少々、注ぎます。
5.コップ半分ほど満たした後、再度かき混ぜます。
6.ソーダ(orトニックウォーター)をフルに加えていきます。
「ソーダを注ぐ場合は、氷に当てないようにしてください。氷に当たると泡が出てしまい、炭酸が抜けてしまい喉越しの良さがなくなってしまいます」
7.最後に広島産のレモンを添えて、お好みでタバスコと一緒に
うう、美味しそう! 今すぐグイッと飲み干したい気持ちを抑えて、どんどんレシピ公開いたします。
焼き牡蠣にあう
レサワのつくり方
「続いては焼き牡蠣にあう『スモーキーレモンサワー』を。ご用意いただくものはこちらです」
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Lemon Sour Recipe
焼き牡蠣にあう「スモーキーレモンサワー」
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《ご用意いただくもの》
- インフュージョン焼酎 45ml
- アイラウイスキー 15ml(※または市販の燻製の素を5~10ml)
- 1/4レモンカット 約10ml
- ソーダorトニックウォーター
- ブラックペッパー
「ふむふむ、スモーキーなレモンサワーということですね…。(10秒ほど考え込んで)えっと、“スモーキー”というのはどういう意味でしょうか(←恥ずかしそうに小声で)」
「燻された香りのことを指します。焼き牡蠣は、牡蠣のエキスと香ばしさが魅力。それに寄り添うお酒をチョイスしたいところです。間違いなくウィスキー…特にスモーキーなスコッチウイスキーとの相性は抜群です。とくれば、スコットランドの南西に浮かぶアイラ島でできるアイラウイスキーです」
「あー、アイラウイスキーですね!はいはい、アレですね!(知らなかったため、スマホで検索しながら)」
1.焼酎45mlにウイスキー15mlを加えて、優しく氷を入れる。
「焼酎とウイスキーを混ぜる発想はなかったです」
「ふふふ。アイラウイスキーのピート香、スモーキーな香りを焼酎と一緒に合わせることで、焼き牡蠣との相性がますます良くなります。もしアイラウイスキーがご用意できないようであれば、燻製の素を使って香り付けしてもいいかと思います」
「代替品までご提案いただきありがとうございます」
2.焼酎とウイスキーを混ぜる。
3.丁寧にソーダ(orトニックウォーター)を注ぐ。
4.ブラックペッパーを振りかける。
5.レモンを入れて完成です。
ウイスキーにブラックペッパー…ちょっとどんな味になっているのか気になりますが、どんどん作業を続けていただきましょう。
カキフライにあう
レサワのつくり方
「4つめのレモンサワーは、カキフライ用です。揚げ物なので油分があるわけですが、食べた後に口の中を爽やかに仕上げるというのが一番のテーマ。この4つの中では、一番王道のレモンサワーに近いものかと思います」
「最初の3つがずいぶんと印象がありましたので、王道と聞いて安心しております」
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Lemon Sour Recipe
カキフライにあう「オリーブレモンサワーwithソルト」
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《ご用意いただくもの》
- インフュージョン焼酎 45ml
- レモン果汁 20~30ml
- ソーダorトニックウォーター
- オリーブオイル
- 塩(きめ細かいもので)
(お好みでハーブ:バジル、しそ、など)
1.グラスのふちにレモンの汁を塗る。
「王道と言いつつ、最初のアクションがそこからなのですね(白目)」
2.濡れたグラスのふちに塩を付着させる。
「塩は口溶けが良いように、岩塩をすり鉢ですったものを使用しています」
「岩塩をすり鉢で(復唱しながら)」
「まぁ、面倒な作業だとは思いますが、普通の精製塩でも、一回すり鉢でするだけで口当たりは全然違います。塩は口どけの良いもののほうが一気に口内に広がります。牡蠣の甘さを引き立たせるためにも細かい塩の方があうかと思います」
「やはりこれくらいしないと、美味しいお酒はできないんですね(ため息)」
3.焼酎をグラスに注ぎ、そこにレモンを絞ります。
「レモンをこのように手で絞る場合は、果肉を上にして皮を伝ってレモンジュースを絞り出した方が、レモンの風味が強くなります。こうしたちょっとしたテクニックも味を向上させるかと思います」
4.レモンの上に氷を入れて、ソーダ(orトニックウォーター)を注ぎます。
「これで完成でしょうか?オリーブレモンサワーなのに、いまのところオリーブ要素がゼロなのですが…」
「ふふふ、仕上げはこうです!」
5.オリーブオイルを注入して完成です!
「レモンサワーにオリーブオイル!しかも結構入れるのですね!」
「カキフライの油分を油分で流すフレンチスタイルをイメージしてみました。レモンと塩とオリーブオイル――フレンチドレッシングのように、さっぱりと口の中の油分を流してくれる、まさにカキフライにピッタリの一杯になっているかと思います」
「野間研究員がお使いのオリーブオイル…やっぱりお高いんでしょう?」
「いえ、むしろ逆ですね。エキストラバージンのような高級なものは青臭さが出るので、大衆的なものの方がいいと思います。色が付いてない物の方が綺麗だと思いますが、安いオリーブオイルの方が、相性がいいかと。高級なものは個性が出てしまうので、味がそちらに支配されるんです。もちろん、それが悪いわけではないですが、今回はさっぱりとさせること、レモンの香りを立たせることを優先させたいので、安価なものの使用をオススメします。あと、もしバジルでもしそでもなんでもいいのですが、ハーブを最後に入れると、また違った香りを楽しめます。ハーブを入れる際は、葉っぱを手で叩いて香りを出してください」
牡蠣にあう
レサワ4種、揃いました!
「こうやって並べると、見た目だけでもバリエーションの豊かさに驚かされます。そして正直、レサワの概念がガラッと変わりました!レサワってこんなに可能性がある飲み物だったんですね」
「そう、可能性は限りなくあります。今回、開発したものはどれも美味しいレサワだと自負していますが、唯一の《正解》ではありません。あくまでひとつの方向性です。この4つのレシピを参考に、広島のみなさんでどんどん、可能性を広げていってほしいと思います。そしてその店、その店で独自にチューニングしていき、それぞれのお店で『究極のレサワ』をつくっていただきたいですね」
今回、ご紹介した4つのレシピ。気になるのはそのお味でしょう。実は皆さまより一足お先に、その味を確かめてみましたが、いずれも今まで飲んだことのないようなとっても美味しいレサワでした。えっ、本当に牡蠣にあうか、ですか? そこは皆さまの舌でお確かめください。
さて、実装をご希望の飲食店のみなさまへのメッセージです。今回のレシピは多少手間がかかるものもありますが、その気になれば簡単にできるものでございます。もちろんこのレシピをそのまま利用するもよし、これをベースに自分のお店用にチューニングするもよし。野間研究員が語るように、広島のみなさまでレサワの可能性を広げていただければと思います。
撮影:阪本 剛史
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今回の牡蠣食う研究
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牡蠣もレモンも名産で、しかも相性がいい――だったら牡蠣にあう究極のレモンサワーを作っちゃおう!